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「どう?見える?」
サンダルを突っかけてベランダから身を乗り出すように夜空を眺める
ブン太の隣に並ぶと、
昼間の熱気を残した生暖かい風が通り抜けた。
毎年深夜この時期に流れるというペルセウス流星群が
今日流れることをライブのMCで知ってから
赤毛の彼は星空を眺めることに必死だ。
「ん~。何個か流れてるぜ…多分。」
「どれ?…あ、今流れたね。」
「え!マジかよ!?見逃した!!」
「フフッ、大丈夫だよ。まだ1番流れる時間は
これからなんだから、ね?」
「ま、そうだな!どこら辺に流れてるんだ?」
「空全体に流れるらしいよ。さっき俺が見たのはあっちの方…
ほら!流れた。」
「本当だ!!流れてるじゃん!!すげぇ!!」
今までの不機嫌そうな表情から一転して瞳をキラキラと
輝かせるブン太に顔が綻ぶ。
「よかったね。願い事は出来たのかい?」
「へ?」
こちらを向いたキョトンとした瞳が”何が?”と物語っていて俺はさらに
笑みを深める。
「流れ星に願いごとを三回言うと叶うって言うだろう?」
首をかしげてやると”あっ”という表情をした後、
悔しそうに顔を歪める。
「忘れてた…。って俺のことはいいから!!お前は一体何お願いしたんだよ!?」
「俺か?俺は”来年もまたブン太と一緒にペルセウス流星群を見られますように”
って祈ったよ」
そういってブン太の手を握ると、ブン太は頬を染めた後ニヤリと笑う。
「来年だけで良いのかよ?」
「え?」
「俺は来年も再来年もこれからも一緒に見られますようにってお願いするぜぃ!!」
幸村は来年だけでいい?そう笑うブン太にからかうつもりが
いつの間にか立場が逆転していることに照れくささを覚えて
頬が染まるのを感じ、照れ隠しにブン太に囁いた。
「…俺も、ずっと同じ空を一緒に見れるように祈るよ」
星にではなく、ブン太に誓うように俺はブン太の手を握り
指を絡めた・・・。
その日は抜けるような空と夏の気配を残した生暖かい風が
吹き抜ける、何の変哲もない…何一つ変わらないそんな秋の日だったんだ…。
赤也がまたジャッカルのヤツを巻き込んで無茶をして真田と柳にとっつかまって…。
柳生と仁王が2人で内緒話をしてて、
俺はベンチに座り、静かに微笑むアイツの隣でガムを膨らまして…
そんないつもの光景の中にこんなに危ういものが潜んでいたなんて知らなかった。
ゆっくりと崩れ落ちるように床に倒れた幸村を、みんなが救急車を呼び、
幸村が運ばれていくのをただただ、泣き叫ぶでもなく呆然と眺めてた。
それからの事はよく分からない。
幸村の病気は難しい病気らしくて、家族以外面会謝絶。
あいつがどんな様子かも分からねぇ。
そんな中でも人は…俺たちはメシ食って、授業受けて、テニスなんかしたり
して…普通の日常を過ごしてる。
ただ幸村の居た部分だけが鋏で切り取られた様にぽっかり穴が
開いているだけで…実感がわかない。
そのうちひょっこり「ブン太!もっと集中して!!」とか
アイツの鋭い声が聞こえてきそうでそわそわする。
なぁ、この日常に何でお前はいねぇんだよ。