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思い付いたネタのたまり場。
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リビングに置かれているソファーの窓際に座って
ご機嫌斜めに雨粒を零している空を見上げている幸村の隣で
昨日干した洗濯物を畳みながらブン太は呆れた声を上げた。

「ったく、いつまで辛気臭い顔で外見てんだよ」
「そんな事を言ったって折角の大型連休だから前半はブン太との旅行、
後半は庭いじりを心行くまで楽しもうと思っていたのに…GW後半に雨が降るなんて
酷すぎるよっ!」
窓の外から目をそらさず返答をして幸村は深く嘆息した。
「庭いじりじゃなくてベランダいじりだろぃ?」というブン太の突っ込みにも
「どちらでも同じだろ」とヒネた声で返してくる。

「旅行中降らなかったんだから良いだろぃ?」
「雨は降らなかったけど、ヒノエ義兄さんと都さんも一緒だっただろう?」
 ブン太とはほとんど2人っきりになれないし、いじられるし安らげなかったよ。
と幸村はなおぶつぶつ文句を言い続けている。

旅行当日まで兄夫婦と合同旅行だと(わざと)伝えていなかった事を根に持って
いるらしい。
それなりに楽しかったし(幸村も楽しんでたみたいだし)
2人っきりの想い出も沢山とはいかないけど出来たのにまだ根に持つとは
呆れるばかりである。

「あのさ。」
「何さ?」
ぶーたれた声で答えを返しながら少し振り返った幸村の
デコに軽くデコピンを食らわし。
「天気が悪いだの庭いじりが出来ないだのどうしようも無い事嘆いてねーで
 俺と2人っきりの時間を楽しもうとかそういう発想に何でお前はなんねぇワケ?」
幸村はしばし振り返った姿のまま鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔をして固まった後、
クスクスと笑いながらパタンと倒れてブン太の膝の上に頭を乗せた。

「もしかして、妬いちゃった?庭と天気に」
タチの悪い笑みを浮べてブン太の膝の上から見上げてくる幸村を
「そこに居られると洗濯物畳めねぇんだけど・・・」と睨みながらも
ブン太の頬は薄っすらと朱が挿していて迫力が無い。
「ふふ、そうだね。折角邪魔も入らない事だし…、2人っきりで楽しい時間を過ごそうか?」

その後、雨で切り取られたような静かな部屋に、2人が仲良く戯れる声が1日中響いていた。


###############

【補足(というか蛇足)】
・ヒノエとブン太兄弟設定
・幸ブンは既に大学生
・幸ブンはアパートで一緒に暮らしてます。
・幸ブンは2泊3日ないし3泊4日で帰って来たが兄夫婦まだまだ
 旅行を楽しんでいる設定
・旅行先は熊野を想定

雨が降ってガーデニングが出来ず、残念そうな幸村がポコンした
ために出来上がったもの。
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夢うつつに感じる髪を掬う指の動きに、頭に感じる掌のぬくもりに…
とても幸せな気分になり口元が緩んで行くのを感じる。
目を開けなくても分かる、これは幸村の手だ。
優しい…優しい…とても安心出来る体温。
満ち足りた気持ちのまま、覚醒しかけていた意識がまた深く
沈んで行くのを感じた。

###############

「んで…どんな状況だこれは…」
おぼろげながら覚えている記憶と、現在の状況を鑑みるに
少し前まで確実に甘々~な雰囲気だったんだろうなー。と
簡単に想像がついてしまい、紅く染まる頬を照れ隠しに一つ掻いた。
「どうするかなー。」
小声で呟き、頭を動かさない様に目線だけを上に向けると
オレの頭に手を置いたまま、目を閉じ浅い寝息を立てている幸村
が目に入ってくる。

幸村がネクタイを緩めただけのスーツ姿な所を見ると、
帰宅して早々、テレビを見ている間に眠りこけてしまったオレを
発見して頭を撫でているうちに自分もつられて眠ってしまった…
というところだろう。
犬猫じゃあるまいし、オレの頭なんか撫でて面白いのか?
そんな疑問が浮ぶが、そんな疑問も気にならないくらい
心配な気持ちも沸き起こる。

「やっぱ相当疲れてんだろうなぁ…。」
先ほどから見上げている幸村の精悍な顔には若干疲れの色が浮んでいる
様に見える。
この春に就職をしてから幸村はテニスに打ち込んでいた時と同じくらい
仕事に打ち込んでいる。
自由の効く仕事をしているオレとは違い、慣れない会社生活は俺が想像
している以上に幸村の負担となってるのかも知れない。

「うーん。ま、コイツの癒しになれるなら、犬猫扱いくらい我慢してやるか!」
それにもう少し寝かせといてやるよ。体調崩されても面倒だしな。
そう呟いて、オレはくすりと小さく微笑んだ。

「ただいま。」
そう声をかけて玄関で靴を脱ぎながら、あれ?と幸村は呟いた。
リビングの扉から賑やかなバラエティー番組の音と蛍光灯の光が
洩れているが、いつもの聞きなれた「おかえり」という声が聴こえない。

スーツの上着を脱いで鞄を持つ右手にかけると、静かにリビングに続く扉
を開いた。
「ブン太…?」
いないの?と小さな声で呼びかけると、リビングの扉に背を向けて
テレビの正面に置かれているソファーから「うー」という籠った声が
聴こえてくる。

「?」
ひょいと周り込んでリビングの入り口からは死角になっている
ソファーを覗きこむと横になり膝を抱えて眠っているブン太がいた。
「だから、返事がなかったのか…。」
何もなくてよかったと安堵の息を吐いて、幸村はネクタイを緩めながら
ブン太の頭側…ソファの左側の空いたスペースにブン太を起さないように
静かに腰を下ろした。

「疲れてるのかな?」
ブン太の顔を覗くと、すぅすぅと穏やかな寝息を立てて幸せそうに眠っている。
穏やかな眠りの様子と横になって膝を抱えて丸まっている様子に口の端が緩む。
「ふふっ、猫みたいだな。」
左手で優しく頭を撫でてやると気持ちが良いのか、寝顔がさらにふにゃんとした
笑顔になるのにこちらも笑みが深まる。
頭を撫で、少し長めのしっかりとした紅の髪を指で弄んでいると
心が穏やかな気分になってくる。

社会人1年目。今の職場に配属されてからもう半年以上経ち、
雰囲気にも仕事にも少しは慣れてきたと思っていたけれど
気付かない間にやはり心身ともに疲れていたらしい。
ブン太の髪を撫でているうちに心の奥にあった澱のようなものが
スッと溶けていくような感覚がする。
「癒される…」
そう呟いて幸村は目を閉じて飽きる事なく、ブン太の頭を撫で続けていた。

「俺の前でテニスの話しをしないでくれ!」
 真田が病室から出てくるのと同時に飛んできた声と、
 閉じられた扉の奥から聞こえる悲愴な叫び声をただただ病院の廊下で
 他のレギュラーたちと聞いていた。
 ―いや、聞いているしかなかった。
 何で俺ってこんなに無力なんだろ…幸村がこんなに辛い時期なのに…
 俺、あいつのコイビトなのに…。
 幸村を支えなきゃそう思うけど。
 だけど、健康で学校に通ってテニスをして―そんな幸村がしたくてしたくて
 欲しくて欲しくて羨ましくてたまらないものを全て当たり前のようにしてる
 俺に一体何が出来るんだっ!

 みんなでぞろぞろと病院から帰る途中、一人振り返り幸村の病室のあたりを
 見上げる。
 もし、もしも、幸村のことを救えるものがあるとすればそれは
 真田でも柳でも、モチロン俺でも無くて…。
 それは幸村自身と時だけだ。
 
 時間頼む。その力で幸村の心から恐怖や絶望を少しでも薄めて欲しい。
 俺は祈ることしか出来ないけどどうか・・・。

#################
ブン太視点。
幸村のセリフはうろ覚え。

「なぁ、ブン太。早く行かんでいいんか?」
「ふぁひ?」
長かった午前の授業が終わりを告げるチャイムと同時に取り出した
パンに齧り付いた俺に呆れたような声が降ってきた。

「んだよ仁王ー。喰いモンならやんねーぞ」
声の主・クラスメートの銀髪から守るようにキュッとパンを握ると
可哀想な子を見るような視線が返ってきた。
「別に喰いモン狙っとる訳じゃないから安心しんしゃい。
 しっかし、この様子じゃ何もしらんようじゃな。」
「………何をだよ?」
「ジンクスっちゅーやつ。」
「ジンクスぅ~!?なんじゃそりゃ?」
「ほれ、ブン太。今日の朝礼で海原祭のパンフが配られたじゃろ?」
「あぁ、コレのことだろぃ?」
「そう、それじゃ。パンフの一番後ろから2ページ目の何も書いとらんページがあるんよ。」
「ふんふん。」
 ペラリと裏表紙から2枚ほどページをめくると1文字も書かれていない
 キレイな水色の紙が確かにある。よく見ると何のためかミシン目が入っていて切り取りやすいように
 なっている。
「好きな人のな、そのページを貰って自分と好きな人の2人の名前を書くんじゃ。
 それを海原祭の最終日に海に流すと2人の絆が深まるちゅー話やの。」
「…なぁ、仁王この紙って1人1枚だよな?」
「そうじゃ、人気者ほど競争率が高いからのぅ。今頃幸村は大変そうじゃな。」
 ワシは柳生のゲットしたから安心なり~と先程から浮かべていたタチの悪い笑みを
 深めて柳生から貰った紙を顔の横でヒラヒラと振る。

そう、数ヶ月前にオツキアイというものを始めた俺のコイビト幸村くんは
大変おモテになるのだっ!
  いこーる
競争率が高いということだ。つまりこんなところでのんびり話ししてる場合じゃねぇ!

「バカ…っ!もったいつけてないでそれを早く言えよっ!!」
はき捨てるように仁王に言って右手にパン、左手にパンフを持ってクラスを飛び出した。
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