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夢うつつに感じる髪を掬う指の動きに、頭に感じる掌のぬくもりに…
とても幸せな気分になり口元が緩んで行くのを感じる。
目を開けなくても分かる、これは幸村の手だ。
優しい…優しい…とても安心出来る体温。
満ち足りた気持ちのまま、覚醒しかけていた意識がまた深く
沈んで行くのを感じた。
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「んで…どんな状況だこれは…」
おぼろげながら覚えている記憶と、現在の状況を鑑みるに
少し前まで確実に甘々~な雰囲気だったんだろうなー。と
簡単に想像がついてしまい、紅く染まる頬を照れ隠しに一つ掻いた。
「どうするかなー。」
小声で呟き、頭を動かさない様に目線だけを上に向けると
オレの頭に手を置いたまま、目を閉じ浅い寝息を立てている幸村
が目に入ってくる。
幸村がネクタイを緩めただけのスーツ姿な所を見ると、
帰宅して早々、テレビを見ている間に眠りこけてしまったオレを
発見して頭を撫でているうちに自分もつられて眠ってしまった…
というところだろう。
犬猫じゃあるまいし、オレの頭なんか撫でて面白いのか?
そんな疑問が浮ぶが、そんな疑問も気にならないくらい
心配な気持ちも沸き起こる。
「やっぱ相当疲れてんだろうなぁ…。」
先ほどから見上げている幸村の精悍な顔には若干疲れの色が浮んでいる
様に見える。
この春に就職をしてから幸村はテニスに打ち込んでいた時と同じくらい
仕事に打ち込んでいる。
自由の効く仕事をしているオレとは違い、慣れない会社生活は俺が想像
している以上に幸村の負担となってるのかも知れない。
「うーん。ま、コイツの癒しになれるなら、犬猫扱いくらい我慢してやるか!」
それにもう少し寝かせといてやるよ。体調崩されても面倒だしな。
そう呟いて、オレはくすりと小さく微笑んだ。
「俺の前でテニスの話しをしないでくれ!」
真田が病室から出てくるのと同時に飛んできた声と、
閉じられた扉の奥から聞こえる悲愴な叫び声をただただ病院の廊下で
他のレギュラーたちと聞いていた。
―いや、聞いているしかなかった。
何で俺ってこんなに無力なんだろ…幸村がこんなに辛い時期なのに…
俺、あいつのコイビトなのに…。
幸村を支えなきゃそう思うけど。
だけど、健康で学校に通ってテニスをして―そんな幸村がしたくてしたくて
欲しくて欲しくて羨ましくてたまらないものを全て当たり前のようにしてる
俺に一体何が出来るんだっ!
みんなでぞろぞろと病院から帰る途中、一人振り返り幸村の病室のあたりを
見上げる。
もし、もしも、幸村のことを救えるものがあるとすればそれは
真田でも柳でも、モチロン俺でも無くて…。
それは幸村自身と時だけだ。
時間頼む。その力で幸村の心から恐怖や絶望を少しでも薄めて欲しい。
俺は祈ることしか出来ないけどどうか・・・。
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ブン太視点。
幸村のセリフはうろ覚え。