「なぁ、ブン太。早く行かんでいいんか?」
「ふぁひ?」
長かった午前の授業が終わりを告げるチャイムと同時に取り出した
パンに齧り付いた俺に呆れたような声が降ってきた。
「んだよ仁王ー。喰いモンならやんねーぞ」
声の主・クラスメートの銀髪から守るようにキュッとパンを握ると
可哀想な子を見るような視線が返ってきた。
「別に喰いモン狙っとる訳じゃないから安心しんしゃい。
しっかし、この様子じゃ何もしらんようじゃな。」
「………何をだよ?」
「ジンクスっちゅーやつ。」
「ジンクスぅ~!?なんじゃそりゃ?」
「ほれ、ブン太。今日の朝礼で海原祭のパンフが配られたじゃろ?」
「あぁ、コレのことだろぃ?」
「そう、それじゃ。パンフの一番後ろから2ページ目の何も書いとらんページがあるんよ。」
「ふんふん。」
ペラリと裏表紙から2枚ほどページをめくると1文字も書かれていない
キレイな水色の紙が確かにある。よく見ると何のためかミシン目が入っていて切り取りやすいように
なっている。
「好きな人のな、そのページを貰って自分と好きな人の2人の名前を書くんじゃ。
それを海原祭の最終日に海に流すと2人の絆が深まるちゅー話やの。」
「…なぁ、仁王この紙って1人1枚だよな?」
「そうじゃ、人気者ほど競争率が高いからのぅ。今頃幸村は大変そうじゃな。」
ワシは柳生のゲットしたから安心なり~

と先程から浮かべていたタチの悪い笑みを
深めて柳生から貰った紙を顔の横でヒラヒラと振る。
そう、数ヶ月前にオツキアイというものを始めた俺のコイビト幸村くんは
大変おモテになるのだっ!
いこーる
競争率が高いということだ。つまりこんなところでのんびり話ししてる場合じゃねぇ!
「バカ…っ!もったいつけてないでそれを早く言えよっ!!」
はき捨てるように仁王に言って右手にパン、左手にパンフを持ってクラスを飛び出した。
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