昼休み特有の少し浮き立ったような騒がしさの廊下を抜けて、
いつもの屋上の扉を開けるとまだ仁王と柳生が2人がベンチに座っているだけだった。
キミの笑顔が見たいから~2日前~
「よう、幸村。早かったのぅ。」
ベンチの上に胡坐をかいてすっかりくつろいだ様子の
仁王が軽く片手を上げて挨拶するのに同じく軽く手を上げて
応えた。
「ああ。少し授業が早く終ったからね。他のみんなは?」
「まだの様ですね。3組は確か今日生物の実験だと柳くんが言って
いたので、柳くんと丸井くんは遅くなるでしょうね。」
仁王の右隣りに折り目正しく座っている柳生が俺の疑問に的確に答えてくれる。
「そうなんだ。…ふふっ、しかし相変らずお前達2人は対照的だな。
どうして付き合ってるのか不思議だよ。」
仁王の斜め左の床に座って弁当の包みを開きながら言うと、
柳生がさも可笑しそうに笑った。
「それを言うならば貴方と丸井くんも人の事は言えないでしょう。」
ですよね?と同意を求める柳生に応えて「そうじゃ、そうじゃ」
と仁王まで相槌を打っている。
「そうかな?お似合いだろう?」
俺とブン太は。そう首を傾げると仁王がやってられんわとでも言いたげに
顔の横でヒラヒラと右手を横に振った。
「そういや、ブン太と言えばもうすぐアイツの誕生日じゃけど、プレゼント
はもう用意したんか?」
ぽんっ!っと思い出した様に聞いてきた仁王の言葉に一瞬忘れて
いた懸案事項を思い出した。
「う~ん。それなんだよね。良いものが思い浮かばなくて…。」
「なんじゃ、それだったらお約束なアレが一番良いじゃろ。」
「アレ?」
イタズラを思いついた様な顔をする仁王を胡散臭げに聞き返すと、
返って来た答えは案の定…なモノだった。
「プレゼントはお・れ
ってやつじゃ」
「へぇ…。勧めてくれるって事は仁王が試して大成功だったって事なのかな?」
「おぅよ。去年試したんじゃが、そりゃぁ比呂士も大喜びで…ぐっ!…痛いじゃろ。」
ふざけてニヤニヤ喋る仁王に柳生がサイドからわき腹に拳を喰らわせた。
紳士らしからぬ荒々しい動作だが、逆光眼鏡のせいで表情は読めない。
「仁王くん。幸村くんは真剣に考えているのですから、ふざけるのはお止めなさい。
幸村くん、お役に立てずにすみません。でも、丸井くんなら幸村くんが心を
込めて送ったものならば何でも喜んでくださると思いますよ」
ニッコリと微笑みを向けられた台詞に笑顔で
「あぁ、ありがとう」と答えた瞬間に
豪快に開く屋上の扉が開いて「腹減ったー!!」という
赤髪の彼の元気な声が空に溶けた。
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またしても、解決策を得られなかった幸村氏。
仁王と幸村は揃うと腹探り合戦っぽい穏やかならざる雰囲気を
醸し出しそうなイメージ。
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