8月10日 はれ。
ニンゲンの男の子に飼われることになったから、今日から日記をつけて
みようと思う。
拾われてすぐにオレはお風呂に入れられた。
お風呂は水がいっぱいだし、突然ぬめぬめしたモノ(ぼでぃーそーぷって言うらしい)
をつけられて泡々になって何かイヤで脱出しようとしてみた。
天才的なオレに逃げられない訳ないぜ!なんて思ってたら予想を上回る速さで
首根っこ掴まれて引き戻された、ありえねぇ。
そのまま持ち上げられて、男の子と目が合う。
「そのまま出て行ったら廊下が泡だらけになるだろう?」
そう優しく言われたけど目が笑っていない、この男の子は見た目に似合わず怖ぇぇ…。
ぶらりと垂れ下がった手足が思わずブルブル震えてしまった。
抵抗する気も失せて大人しくしているとちゃんと優しく体を洗ってくれた。
ほっと一安心。
温かいタオルで体拭いてもらって、温かい風で体乾かしてもらって
広い部屋のソファーに座る男の子の膝の上でゴロゴロしてた。
一定のリズムで頭を撫でてくれる手が気持ちよくてついうとうとし始めた時、
ぴたりと頭を撫でる手が止まった。
『何だよ~、折角気持ちよかったのに!』と声を上げると
前足の下に手を入れられて抱っこされる。
目の前に男の子の綺麗な顔がある、何だ?何が起こるんだ?とシッポを
パタパタさせていると男の子が口を開いた。
「決めた!お前の名前は今から『ブン太』だ!
俺は精市。幸村精市。よろしくな、ブン太」
いきなりの宣言に頭が追いつかず、しばらく耳をぴくぴくして言われたことを整理する。
どうやら『オレ』は今日から『ブン太』になったらしい。
「どうかな?ブン太。名前気に入らない?」
首をかしげて聞いてくるこの男の子は『精市』くん・・・。
イキナリ今からお前はブン太だよ。なんて言われても全然実感湧かねぇし、
その名前が良いのか悪いのかも分かんねぇ。
でも…。
「ブン太?」
オレに確認するまでもなく決定事項っぽく『精市』くんが
呼ぶオレの新しい名前の言い方はとっても優しくて
くすぐったいくらい嬉しいから、まぁいいやなんて思っちゃう。
『気に入ったぜぃ!精市くん、シクヨロ!』
そう大きく言うと精市くんはまるでオレの言葉が分かったみたいに
にっこりと微笑んでくれた。
#######
名前けってーい。
名前決めたのはいいが、親に了承とってないよ精市くん。
いいのかな?幸村家。
幸村家は「オレがルールブックだ!」並みに精市くんが法律
という設定にしてしまおう…。面倒だ。
PR